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として「救出事案の把握に関すること」のような形で記載されていることがあるが、その場合、消防部(消防本部)が描いている活動イメージは、119番通報あるいは駆け込み通報による救出事案の把握であり、ローラー作戦的な方法ではない。
また、地震と同時に4件(3.4件を切上げ。阪神・淡路大震災と同じ季節・時間帯の場合)の火災が発生する。この火災は組織的な対応を必要とする程度のものであるため、消防本部や消防団はこの対応に追われる可能性が高い。
このように、阪神・淡路大震災級の地震により発生する多数の要救出現場に関する情報把握については、実態的にも消防本部や消防団だけでは対応できないのであるが、それではそれに代わる要救出現場情報収集体制はどのようにあるべきかが問題とされなければならない。
災害応急対策計画(情報収集伝達計画)では、この問題をどのように解決するのかが具体的に記されなければならないが、そのような情報収集伝達計画はきわめて少ないのが現状である。
(4)問題点4:広報の位置づけが弱い
災害時の広報というと、都道府県や市町村はマスコミから情報を要求されて提供するといった「受け身的」なものと考える人も多い。しかし、この考え方は改める必要がある。
(3)で危機管理に触れたが、危機管理の本質は状況あと追い的に対応するのではなく主導的に局面を開くというところにある5)。危機を管理すると言う以上は主導的に局面を切り開かなければいけない。その局面を主導的に切り開く主要な武器の一つが広報であるが、その認識がまだまだ都道府県、市町村に足りない。その結果、広報体制が不十分であったり、上記の視点が欠けた広報計画になっているものが少なからず見受けられる。
なぜ、広報が都道府県や市町村が災害局面を主導的に切り開くための主要な武器であるかを以下に述べよう。
災害時には、殺到する電話対応に追われ、災害対策本部事務局が参謀的な役割を十分果たせない事態がしばしば発生する。この電話の中には、不要不急と思われるものや他の防災関係機関(例えば、ライフライン関係機関)で対応するのが適当と思われるもの(停電やガスの復旧見通しの問い合わせなど)が多数含まれている。その結果、極端に言えば、災害対策本部事務局が電話相談室のような状況を呈することもある。
広報担当者はこのような状況を随時モニターし、必要に応じてライフライン機関の広報機能の充実を要請したり、あるいは、マスコミの協力を得て、不要不急の問い合わせニーズを軽減させるような広報を早い段階から計画的・組織的に実行することが求められる。
同様の対応は、義援物資の殺到による現場の混乱を解消するためにも必要である。
このような広報が効果的に実行されるならば、現場の混乱を大幅に軽減し、局面を一挙に転換することも可能になると考えられる。
また、災害発生後は、被災住民に対し膨大な救援情報を適切なタイミングで提供しなければならないが、そのための適当な広報手段をもたない市町村も多い。その場合には、マスコミや各種メディアに住民の掲示板の役割を担ってもらうことも必要になる。広報担当者にはそれを成しうるだけの才覚が必要になる。
以上は広報の重要性を示す数例に過ぎない。広報の重要性は前述したように、局面を主導的に切り開くための主要な武器の一つであり、危機管理の重要な一翼を担っているという点にある。今後は、このような認識のもとに災害応急対策計画の中に広報

 

 

 

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